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KINAN CYCLING

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LINE@会員限定記事特別公開「The ROOTS Vol.9 山本元喜」

2019年シーズンにチーム公式LINEでお届けした連載「The ROOTS」。
選手の生い立ちやロードレースへの思いに迫るスペシャル企画。
本来はLINE@会員限定の有料記事ですが、2019年シーズンの熱い応援にチームとして感謝すべく、期間限定でチームWEBで公開中です。
全9回、最終回は山本元喜選手です。

記事の内容は有料記事公開時点のものとなっています。
なお、これらの記事は予告なく公開終了となることがございますので、何卒ご了承ください。
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The ROOTS Vol.9 山本元喜
ヨーロッパ・アジア・日本…と世界各地のレースで実績を残す稀有な存在。
日本チャンピオンを経験し、さらなる高みを目指して走り続ける。
エースとして、アシストとして、KINAN Cycling Teamを代表する選手へ。
チームを引っ張る立場を自覚し将来の戦いを見据える。
-山本 元喜 やまもと げんき-
1991年11月19日生まれ・大阪府生まれ奈良県育ち
163cm・62kg
脚質:パンチャー、ルーラー
主な実績:2016年ジロ・デ・イタリア出場、2018年全日本選手権ロードレース優勝、2018年インターナショナル・ツール・ド・バニュワンギ・イジェン個人総合5位、2019年ツール・ド・北海道個人総合5位
■日本王座を降りるとともに始まった逆襲

 2019年6月30日、全日本選手権自転車競技ロードレース。梅雨の終わりにやってきた荒天は、KINAN Cycling Teamにとって涙雨でもあった。選手たちの体力が奪われていくにつれ、落車や失速によってレースプランは脆くも崩れていったのだった。

 前回覇者としてスタートラインについた山本元喜も、やっとの思いでフィニッシュラインを通過した。結果は12位。ロードレースは水物とはいえ、ディフェンディングチャンピオンとしてのリザルトとしては物足りないことは否めなかった。

 それでも、走り終えた彼の表情はどこか晴れ晴れとしていた。何かから解き放たれたような、肩の荷が下りたような、気持ちが楽になっていくような感覚は、周りにいた者たちにも伝わっていたに違いない。

 そんな彼の第一声は「この歳で1年間日本チャンピオンジャージが着られたことは、今後につながる」。もちろんその通りだろう。1年に1回の大舞台で、勝者はただ1人だけ。勝った者にしか与えられない純白に赤帯の「ジャパンカラー」は、何度挑戦しようと跳ね返される選手が大多数なのだ。当時26歳にしてそれに手が届くというのは、キャリアにおいては決して遅い部類ではないだろう。

 でも、である。彼のその言葉が嘘ではないとしても、レース後に見せた表情とはどうにも不釣り合いだったのだ。1年間、チャンピオンジャージホルダーとしての任務をまっとうしたのだから、ホッとしたその気持ちを声に表したって誰も攻めやしない。

 「正直、プレッシャーは感じていたし、これからはもう少し楽になるのではないかな」

 不意に吐いたこの言葉こそ、チャンピオンジャージを手放した瞬間の本心だったに違いない。そして、ノーマルジャージに戻るとともに、山本元喜の逆襲ともいえる、集中力を感じさせる本来の姿が見られるようになったのである。
■総合力を身につけステージレースでも上位へ

 2019年シーズン開幕前は、翌年に控えた東京五輪を意識した戦いをするつもりでいた。UCIポイントを獲得し、日本代表となるための選考レースに加わることが自らに課したノルマでもあった。しかし、シーズン前半でのチーム不振とまるで足並みをそろえるかのように、山本自身も成果を挙げることはできなかった。

 やはりポイントになったのは、チャンピオンジャージの返上だったのだろうか。夏場から調子を一気に上げた。日本人メンバーだけで挑んだおおいた アーバンクラシックではチーム2番手の7位でUCIポイントを獲得。ツール・ド・北海道では、大会途中から総合エースを任され、個人総合5位とまとめた。

 そのほかにも、展開次第で上位進出の可能性のあったレースは多々。強烈なアタックが魅力ではあるが、好調時の山本はアタックだけには頼らない。平地でのスピードと山岳での登坂力とのバランスに長け、ステージレースでの総合成績を狙っていけるマルチさを兼ね備える。もっとも山本自身が「エースとして走ること」を意識し、目指し続けている姿こそが、オールラウンダーとしての走りなのである。

 昨年から今年にかけての2シーズン、理想に近づいていることを自認している。レースでの好リザルトこそが、何よりの証明だ。

 目標としていた東京五輪は、遠いのは実情だ。だがいまは、そればかりに固執せず、与えられたレースプログラムの中で走りを追究し続けていく。結果として表れているからこそ、自らの走りに正面から向き合うことができる。
■ヨーロッパでの経験をバックボーンに

 いまでこそ日本にベースを置きながら、国内はもちろん、チームの主戦場でもあるアジアでの戦いに本腰を入れる。そこできっちりと結果を残し続ける彼にとって、バックボーンにあるのはヨーロッパで戦った経験である。

 ロードレースを追い続けている方なら誰もが知る、彼のジロ・デ・イタリア出場。世界最高峰のステージレース「グランツール」に出場した、数少ない日本人選手である。山本にとって「人生で一番集中したレース」だったというジロでの3週間。あれを思えば、どんなレースだってこなせるという自負がある。

 ジロ出場は同時に、自らの限界を把握する機会でもあったという。イタリアをめぐった3週間を100とするならば、これはどのくらいなのか。こうした考え方を指標に、己の現在地を知る。

 アジアでの戦いにおいて、山本の持つ実績や経験は群を抜いている。ライバルチームからのマークも厳しくなるが、ここぞという場面で発揮されるのはメンタルの要素でもある。これまでのキャリアで培われた自信と精神力が、大きな武器となっている。
■溢れるセンスはSNSでの発信にも表れる

 彼を語るうえで、もう1つ忘れてはならないのが発信力である。

 ブログでは事細かなレースレポートを書き記し、ジロのレポートは出版にまで至った。Twitterでのユニーク投稿や、ときに身をもって実証することもあるYouTubeと、休むことなく発信を続ける。

 型にはまらないことが彼のよさでもある。誰に言われるでもなく、興味を持ったものにトライしていく。ブログやSNSの発信が軌道に乗っている今でさえ、次の展開を試行錯誤しているほどだ。

 ロードレースにとどまらない溢れるセンスは今後、どこまで伸びていくのだろうか。ちなみに、セカンドキャリアとして考えているのは「カフェのオーナー」だそう。“マスター・山本元喜”も思いのほかイメージしやすいのは、どんなことでも巧みにこなしてしまう器用さからくるものなのだろう。
Interview: Haruka YAMAMOTO
Photos, Edit, Produced: Syunsuke FUKUMITSU

December 2, 2019
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