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KINAN CYCLING

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LINE@会員限定記事特別公開「The ROOTS Vol.3 椿大志」

2019年シーズンにチーム公式LINEでお届けした連載「The ROOTS」。
選手の生い立ちやロードレースへの思いに迫るスペシャル企画。
本来はLINE@会員限定の有料記事ですが、2019年シーズンの熱い応援にチームとして感謝すべく、期間限定でチームWEBで公開中です。
全9回、第3回は椿大志選手です。

記事の内容は有料記事公開時点のものとなっています。
なお、これらの記事は予告なく公開終了となることがございますので、何卒ご了承ください。
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The ROOTS Vol.3 椿大志
レースの内容やトレーニングメニューを理論立てて組み立てる。
本能任せになりがちな選手が多いロードレース界にあって、指折りの“理論派”だ。
そのスタンスが間違っていないことは、ときに自らも驚くほどの鮮烈な走りからもうかがえる。
苦難の時期を乗り越え、復調への歩みを進めた先にあるのは、かつて見せたセンセーショナルな姿に違いない。
-椿 大志 つばき ひろし-
1991年5月18日生まれ・東京都出身
173cm・62kg
脚質:パンチャー
主な実績:2017年ツール・ド・モルッカ第4・第5ステージ優勝・ポイント賞、2012年UCIロード世界選手権出場
■光と陰 それは唐突にやってきた

 あまりに衝撃的だった。

 2017年9月、インドネシアで開催されたステージレース「ツール・ド・モルッカ」は、第1ステージからKINAN Cycling Teamの独壇場。チームとして明確なオーダーは持たず、メンバー全員にチャンスが与えられた中で、日本人選手たちが水を得た魚のごとく躍動した。

 椿大志は虎視眈々と、“その時”を待っていた。

 迎えた第4ステージ、15人近い逃げグループに潜り込むと、後方を走ったメイン集団は彼らの逃げ切りを容認。個人総合上位につけていたチームメートの負担を減らすため、逃げグループで淡々と走っていた椿に、思いがけないチャンスがめぐってきた。そして、フィニッシュまで残り3km、彼のキャリアが変わった。

 ロードレースステージでは初めてとなるUCIレース優勝。それは、個人としてだけでなく、チームに日本人選手UCIレース初勝利をもたらしただけではなく、彼を知るすべての人にとって大きな意味を持つものだった。それまで、チャンスがありながら勝ちきれずにいた姿を見てきた仲間たち、アシストとして堅実に働く姿を知る選手・チームスタッフ…勝つことに慣れず、どこかぎこちない彼のフィニッシュ後の振る舞いの一方で、仲間たちは人目をはばかることなく涙を流したのだった。

 その翌日にもステージ優勝。誰もが、椿がこの先の階段を何段も飛ばして駆け上がっていくと思っていた。もしかすると、彼自身にもその手ごたえはあったかもしれない。

 その先に待っていた苦労など、さすがに誰も予想はできなかったはずだ。
■夢と可能性を信じ走り続けたフランス時代

 レーサーとしての人生は運命づけられたものだったのかもしれない。ロードバイクのスピードに魅せられた中学時代。念願かなってバイクを手に入れた高校時代には、レース志向の強い周囲に乗せられる形で、ロードレースを始めることとなる。

 口から心臓が出るかと思うほど苦しんだというが、その初レースで勝ってしまったのだから、いよいよ身も心もロードレースにどっぷり浸かっていくことになる。学業にも力を入れ、進学校へと進んだが、なんとなく大学へ行って、なんとなく就職するのだろうという意識は、やがて明確な目標のもとに塗り替えられていくのであった。

 プロを目指してヨーロッパへ。フランスを拠点に活動したアンダー23時代には、同カテゴリーで日本チャンピオンに輝き、世界選手権にも出場。フランスでのレースでは、あと50m粘れば優勝というビッグチャンスもあった。だが、目指したトップシーンはどこまで走ってもはるか先のものだった。

 ヨーロッパで、というこだわりを捨て、与えられた環境で全力を尽くす。そう気持ちを切り替え、リスタートを切ったのが2017年。KINAN Cycling Teamの一員として走り出した年だった。
■信念を曲げず復調への道歩む

 インドネシアでの勝利は、フランスで培った経験と脚力、さらにはKINAN Cycling Team入り後のメンタル面での充実、これらが1つになったことによるものだった。一方で、1つでも歯車がかみ合わないと、すべてが狂う危険性もはらんでいる。不本意ながらも、彼はそれを体現してしまった。

 前年のシーズンを早めに切り上げ、しっかりと冬場にトレーニングを積んで迎えた2018年シーズン。出足は順調に見えたが、少しずつ走りに精彩を欠いていくことになる。立て直しを誓ったレースで落車し鎖骨骨折。そのけがが癒えてからも、本来の走りとは程遠い内容に苦しめられた。

 ただ、トレーニングに臨むスタンス、レースまでの日々の流れはかたくなに変えることはしなかった。日々の生活でも、食事の内容や摂取タイミング、規則正しい生活を心掛け、バイクにまたがるとき以外での不必要なストレスを極力排除していった。

 その姿勢は、ただよい時の影を追っているわけではなく、これまでのキャリアで築き上げてきた彼なりの“理論”に基づくもの。苦しむ姿を見て、周りはついアドバイスを送ってしまいがちだったが、それに惑わされることなく突き進み続ける彼の信念に、やがて誰もが「椿大志の復活」を信じるようになっていったのだった。

 そして、2019年シーズンが半ば、ようやく彼らしさが戻ってきた。全日本ロードでは、堅実なアシストでチームメートを前方へと押し上げる任務を遂行。シーズン後半へ、重要戦力としてメドが立った。
■いつだってポジティブに もう一度光あたる場所へ

 自転車を通じて海外で長く生活したこともあり、英語とフランス語が堪能。コミュニケーション能力の高さは、ときにチーム全体をまとめるのに大きな役割を果たすこともある。チームからも、そのキャプテンシーの高さは評価される。

 自転車を一歩離れれば、旅行へ行ったり、映画を見たり、ゲームをしたり…気分転換に釣りに出かけることもあるという一面も。チームメートからは「ストイックで頑固」といったイメージを持たれがちだが、案外ONとOFFの切り替えもしっかりしているのである。

 思うような走りができずにいた時期も、いつもと変りなく仲間やスタッフと接し、前向きな姿勢は崩すことがなかった。決して腐らず、その時々でできることをこなしていく人にこそ、もう一度光が当たるべきではないだろうか。椿大志にそのときがやってくることを、みな信じているのである。
Interview: Haruka YAMAMOTO
Photos: Kensaku SAKAI, Syunsuke FUKUMITSU
Edit, Produced: Syunsuke FUKUMITSU

July 9, 2019
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